研究概要 |
■ 研究概要
1.研究の目的は、会社法全体の体系を一貫した視点で把握することができる理論を構築することである。平成17年の会社法成立以前、商法における会社法規定は、大陸法系を基礎に制定された法を英米法系の規律を加えて度々改正されていた。平成17年会社法は、それまでの商法を整理し、新たなコンセプトを導入する形の大改正であったが、依然として会社実務との乖離や会社の支配を核とする体系的な理論が明確にされたとはいえない。特に、会社の支配が顕在化する結合企業のガバナンスや企業買収の局面において、会社の経営効率と利害関係者(とりわけ少数派株主)の利益保護を両立させるという視点に欠けている。確かに、会社法は、成立後、平成26年6月の大きな改正に続き、令和元年12月改正会社法が令和3年に施行された。コロナ禍において注目された完全バーチャル株主総会も特別法の改正により一定の条件を充たせば可能となり、令和4年には実際に数社において実施された。このように、株式会社のガバナンスのあり方は技術の発展にともない、大きく変化しつつある。株式会社は現代の経済社会において重要な地位を占めており、その動向は国民生活にも大きな影響を与える。AI等の技術革新にともなう社会の変化に会社法も常に対応しつづけなければならないが、同時に、会社法全体を貫く体系的視点をもつことも不可欠である。
2.筆者の研究は、株式会社のガバナンスを中心に体系的視点から会社法のあるべき解釈論および立法的措置の必要性等を検討することを目的としている。付随して、裁判例を元に、現実に発生した問題の妥当な解決を導く会社法の解釈についても検討する。
3.企業のコンプライアンスが叫ばれるようになって久しいが、形式だけ法令遵守体制を整えるのでは意味がない。これまでの結合企業におけるガバナンスの研究の成果を単独の企業においても応用して解釈論および立法論的解決に向けた研究を行いたい。巨大企業の不祥事は一企業の問題にとどまらず、多くのステイクホルダーに甚大な影響を及ぼす。企業の経営効率を高めると同時にステイクホルダー間の利害を公正に調整できるよう会社法の理念を実務において実現できるような会社法理論の構築をめざす。
4.これらの研究を通じて、企業の経営効率を高めると同時に、企業不祥事によって大きな損害を被る被害者が生じることを未然に防ぐことができると考える。 |
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業績 |
■ 学会発表
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■ 著書・論文歴
1. |
2024/01 |
論文 |
定款による株主総会議決権代理行使資格の制限に関する考察 産大法学 57(3/4合併号),345-354頁 (単著) |
2. |
2020/01 |
論文 |
代表訴訟における請求権の再構成に関する一試論 産大法学 53(3・4合併),61-77頁 (単著) |
3. |
2018/06 |
著書 |
会社法の到達点と展望(森淳二朗先生御退職記念論文集) 234-248頁 (共著) |
4. |
2017/01 |
論文 |
判例研究 任期途中で解任された取締役の損害賠償請求権について-東京地裁平成27年6月29日判決- 産大法学 50(3・4合併),341-358頁 (単著) |
5. |
2016 |
著書 |
設問でスタートする会社法 (共著) |
6. |
2015 |
著書 |
プライマリー会社法(第4版) (共著) |
7. |
2014 |
著書 |
会社法講義 仕組みと働き (共著) |
8. |
2014 |
論文 |
会社法における取締役の任務懈怠概念再構成試案(二・完) 産大法学 47/3・4,1-29 (単著) |
9. |
2010 |
著書 |
プライマリー会社法(第3版) (共著) |
10. |
2010 |
著書 |
プライマリー商法総則・商行為法(第3版) (共著) |
11. |
2010 |
論文 |
会社法における取締役の任務懈怠概念再構成試案(一) 産大法学 43/3・4,199-227 (単著) |
12. |
2007 |
著書 |
新版 法律用語を学ぶ人のために (共著) |
13. |
2007 |
その他 |
結合企業規制の概要と近時の動向 (単著) |
14. |
2006 |
著書 |
プライマリー商法総則・商行為法(第2版) (共著) |
15. |
2006 |
著書 |
プライマリー新・会社法 (共著) |
16. |
2006 |
その他 |
新会社法と中小規模の株式会社の機関設計を中心に |
17. |
2003 |
著書 |
新商法講義1 商法総則・商行為法(第3版) (共著) |
18. |
2003 |
著書 |
現代ビジネス判例 企業行動の新たなる指針 (共著) |
19. |
2002 |
著書 |
プライマリー会社法 (共著) |
20. |
2002 |
論文 |
東京都観光汽船株主代表訴訟事件 産大法学 35/3・4,172-201 (単著) |
21. |
2000 |
論文 |
結合企業のガバナンス-経営の効率と支配の公正の両立の観点から- 産大法学 34/1,2,4,111-171,212-303 (単著) |
22. |
1994 |
論文 |
支配株式譲渡と株式売却機会の均等ルール-その会社法理への内在化の試み 法政研究 61/1,107 (単著) |
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■ 現在の専門分野
民事法学 (キーワード:コーポレートガバナンス、コンプライアンス、株式会社、結合企業)
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