研究キーワード:刑法、刑事法学
    (最終更新日:2024-01-12 18:31:38)
  オカモト アキコ   OKAMOTO AKIKO
  岡本 昌子
   所属   京都産業大学  法学部 法律学科
   職種   教授
業績
■ 学会発表
1. 2007 自招侵害について(日本刑法学会)
■ 著書・論文歴
1. 2023/11 論文  <書評>木崎峻輔著『相互闘争状況と正当防衛-理論と実務の交錯-』(2023年、成文堂) 刑事法ジャーナル (78),198頁 (単著) 
2. 2023/07 論文  特殊詐欺の受け子に対する詐欺罪の故意および共謀の認定 同志社法学 (436),277-311頁 (単著) 
3. 2021/03 論文  カナダの新正当防衛規定に関する一考察 同志社法学 72(2) (単著) 
4. 2021/02 著書  『イギリス刑法の原理』   (共著) 
5. 2020/11 その他  偽証の意義 刑法判例百選Ⅱ各論〔第8版〕  (単著) 
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経歴
■ 学歴
1.
(学位取得)
同志社大学 修士 (法学)
2.
(学位取得)
同志社大学 博士(法学)
■ 職歴
1. 2018/04~ 京都産業大学大学院法学研究科 後期研究指導教員
2. 2017/04~ 京都産業大学大学院法学研究科 前期研究指導教員
3. 2016/04~ 京都産業大学 法学部 法律学科 教授
4. 2014/04~2014/09 カナダ・トロント大学客員研究員 研究員
5. 2013/04~2016/03 京都産業大学大学院法務研究科 教授
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■ 所属学会
1. 日本刑法学会
2. 日本被害者学会
その他
■ 社会における活動
1. 2017/11~2021/10 京都地方裁判所委員会委員
■ 研究課題・受託研究・科研費
1. 1995~  die Rechtswidrigkeit 個人研究 
2. 1995~  違法性論 個人研究 
■ 委員会・協会等
1. 2017/11/01~2021/10/31 京都地方裁判所委員会委員 委員
2. 2019/06/01~2022/05/31 京都府警察留置施設視察委員会 委員
3. 2021/09/17~ 京都市生活安全施策審議会 委員
■ 現在の専門分野
刑事法学 (キーワード:刑法、刑事法学) 
科研
■ 研究概要
◆研究課題
正当防衛を中心とした違法性論の研究
刑法解釈学における理論と実務の架橋

◆研究概要
研究課題の一つは、ライフワークである、正当防衛を中心とした違法性論の研究、もう一つは、刑法解釈学における理論と実務の架橋である。
正当防衛は刑法解釈学において古くから研究されてきた問題だが、先行事情が存在する正当防衛状況に関する議論は解決を見ず、更に、最決平成29年4月26日を受けて正当防衛論はある意味混沌としているといえる。例えば、「検察官の上記主張が、・・・〔1〕正当防衛状況と、〔2〕その存在を前提とした防衛行為性(防衛の意思及び防衛行為の相当性)の要件とをおよそ区別せずに諸般の事情を全体的に考慮して正当防衛の成否を検討すべきであるとの趣旨であるとすれば、それは・・・刑法36条1項の文理や、これに基づいて侵害の急迫性、防衛の意思、防衛行為の相当性といった要件を基本的に区別している一連の判例にもそぐわないものであり、正当防衛の判断を著しく不安定にするもの」(横浜地判令和3年3月19日)であるという判決は、この正当防衛論における混迷を如実に表しているといえよう。
「刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとは認められ」ないとして正当防衛の成立を否定した前出平成29年最決が示すように、実質的判断が要求される違法性阻却事由においては、正当防衛原理の深化を基にして、各成立要件の関係を解明し、どのように総合的な判断を行うのかについてある程度具体的に示す必要があり、それによって初めて法的安定性を確保できる。
正当防衛論の研究は、裁判員制度にも資するものである。自招侵害に対して初めて最高裁が判示した最決平成20年5月20日は、裁判員制度を意識して、法の素人に理解しやすい正当防衛論の構築を目指したものであるとの指摘がなされているが、同判例に対する評価からもわかるように、裁判員にわかりやすい正当防衛理論が提供されているとは必ずしも言い切れない。先述の平成29年最決も、正当防衛の成否を判断するにおいて考慮すべき要素を具体的に列挙しているが、各要素の相互関係、そして、それらをどのように考慮して正当防衛の成否を判断すべきなのかは自明ではない。
裁判で争われる正当防衛の事案は、教壇事例と異なり、何らかの先行事情が存在することがほとんどであることから、正当防衛の成否の判断において先行する事情をどのように考慮すべきか、どのような事情が考慮されるべき先行事情なのか、それらは正当防衛の各成立要件とどのような関係にあるのか、これらを解明する必要がある。そのためには、我が国における判例及び学説の研究は勿論のこと、比較法研究も重要であると考える。私は、自招侵害に関する規定を設けていたカナダを比較法の対象として研究を行ってきた。同国の議論は、いわゆるケースバイケース型の正当防衛規定のプロ&コンを示し、正当防衛論を検討する上で有益なものであったが、同国は、約10年前に、防衛者による挑発の有無という大きな枠組みを撤廃するという正当防衛規定の抜本改正を行い、新規定を適用した判例が蓄積され始めた同国の研究は、これまで以上に我が国における正当防衛論研究に有益であると考える。
 いうまでもなく、正当防衛も、理論と実務の架橋を意識して研究を進めるべき分野といえるが、昨今、刑法の様々な論点に関して、理論と実務の架橋の重要性を再度意識させる重要判例が下されている。先の正当防衛論に限らず、刑法解釈学における重要論点について、実務との架橋を意識した学説の深化を試みたいと考えている。