セオ ミスズ   SEO MISUZU
  瀬尾 美鈴
   所属   京都産業大学  生命科学部 先端生命科学科
   職種   教授
発表年月日 2022/05/28
発表テーマ ⼤腸がんのオルガノイド培養系の確⽴とFGFR3 発現による抗がん剤耐性の解析
会議名 第68回日本生化学会近畿支部例会
主催者 日本生化学会近畿支部
学会区分 地方学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 共同
開催地名 大津
開催期間 2022/05/28
発表者・共同発表者 中元 萌,福光一生,楠本響介、上野信洋、上田修吾、奥知慶久、山本健人、瀬尾美鈴
概要 [背景]FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)は、その異常発現や活性化によりさまざまながん細胞の増殖を促進し抗がん剤耐性を獲得させることが報告されている。FGFR3は選択的スプライシングによりFGFR3ⅢbとFGFR3Ⅲcが生成され、正常細胞では上皮系細胞でFGFR3Ⅲb、間葉系細胞でFGFR3Ⅲcの発現が見られる。大腸がん細胞Caco2を用いた研究室の先行研究で、FGFR3Ⅲcの発現上昇により、細胞増殖と浸潤が促進され、大腸がんの標準治療薬である抗がん剤5-Fuに対する耐性を獲得することが示された。[目的] 本研究において、大腸がん患者の検体から得られたがん組織を用いて、オルガノイド培養系を確立し、臨床においてもFGFR3の発現の亢進が抗がん剤耐性の獲得に寄与するかどうかを検証した。[結果・考察] 大腸がん患者由来の29検体を用いてオルガノイド培養系を試みたところ、19検体でオルガノイドを確立することができた。オルガノイドをMatrigelやMatrimix(511)に包埋して培養したのち、切片を作成して組織免疫染色を行った。FGFR3発現の見られるオルガノイド内部でもKi67陽性を示したことから細胞が増殖していることを示した。6検体から得られたオルガノイドをnon-coating 96 well plateに播種し、一晩培養後に5-FUを添加して4日後にMTT assayを行い、60%生存率が得られる5-FU濃度を比較した。さらにFGFR3のmRNA発現をqRT-PCRで解析し5-FU耐性との関係を検討した。その結果、5-FUに対する耐性とFGFR3ⅢbまたはFGFR3Ⅲcの発現の間には、弱い正の相関が認められた。この結果は、FGFR3の発現が5-FUの耐性獲得に関与していることを示唆している。今後は、オルガノイドの遺伝子発現の解析結果とがん患者の臨床情報との関連をさらに詳細に比較し、がん患者の治療に有効に活用できることが期待される。