セオ ミスズ   SEO MISUZU
  瀬尾 美鈴
   所属   京都産業大学  生命科学部 先端生命科学科
   職種   教授
発表年月日 2018/05/26
発表テーマ 食道がん細胞におけるFGFR3IIIc発現と抗がん剤耐性の獲得
会議名 第65回日本生化学会近畿支部例会
主催者 日本生化学会近畿支部
学会区分 地方学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 共同
開催地名 西宮
開催期間 2018/05/26
発表者・共同発表者 太田成美、上野信洋、上田修吾、菖蒲池香奈、米倉寛人、神吉正太郎、瀬尾美鈴
概要 日本における食道がん患者の5年生存率は30%であり、全がんの生存率約60%と比較して低く、予後が悪いことが報告されている。日本の食道がんの90%以上は、扁平上皮がんであるが、良い分子標的治療薬はまだない。以前、我々の研究室では、線維芽細胞増殖因子受容体3の選択的スプライシングで生じるIIIcアイソフォーム(FGFR3IIIc)の発現上昇が、食道がん患者の腫瘍組織でステージ0の早い段階から認められることから、分子マーカーとしての有用性を報告した(1)。食道がんの化学治療法として、切除不能進行・再発食道がんに対して、シスプラチンと5-FUを一次治療として用い、二次治療としてドセタキセルやパクリタキセルなどのタキサン系薬剤を用いる。本研究においては、FGFR3IIIc発現による抗がん剤耐性の獲得との関係について解析した。
【方法】
術前化学療法無しの食道がん患者試料(北野病院)をFGFR3IIIc特異的ポリクロナール抗体(ヤマサ105抗体)により組織免疫染色し、FGFR3IIIcの発現量を定量化した。さらに、増殖マーカーであるKi67とFGFR3IIIc発現部位を比較した。食道がん細胞株KYSE220(中分化型)およびKYSE270(高分化型)の2種類を用いて、FGFR3IIIcを過剰発現させ、抗がん剤耐性を獲得するかMTT assayを行った。
【結果・考察】
術前化学療法無しの食道がん患者のがん部位において、非がん部と比較して、FGFR3IIIcの発現量が有意に高くなった。また、がん部/非がん部のFGFR3IIIcの発現比が高いと再発する傾向が高くなり、特に術前術後化学療法無群においてはFGFR3IIIcの発現比が高いと全生存期間が短くなるとの相関傾向(R2=0.61)を示した。食道がん細胞株KYSE220とKYSE270を用いたMTT assayにおいて、FGFR3IIIcを発現すると、KYSE270ではIC50は変わらなかったが、KYSE220においてドセタキセルに対するIC50がXXnMからXXnMに何倍上昇していた。FGFR3IIIcは食道がんの再発と食道がん患者の全生存期間の短縮、及び抗がん剤耐性獲得に関わっていると考えられる。