セオ ミスズ   SEO MISUZU
  瀬尾 美鈴
   所属   京都産業大学  生命科学部 先端生命科学科
   職種   教授
発表年月日 2020/09/15
発表テーマ FGFR3発現による大腸がん悪性化メカニズムの解明.
会議名 第93回日本生化学会大会
主催者 日本生化学会
学会区分 全国学会
発表形式 口頭(一般)
単独共同区分 共同
開催地名 横浜
開催期間 2020/09/14~2020/09/16
発表者・共同発表者 福光一生, 米倉寛人, 松本寛加, 三浦琴美, 上野信洋, 上田修吾, 瀬尾美鈴.
概要 背景:大腸がん患者において FGFR3 の発現上昇により、がん悪性化への関与が報告
されている。また、フルオロウラシル(5-FU)化学治療の長期化とともに腫瘍の薬剤
耐性の獲得が問題になっており、薬剤耐性の獲得に繊維芽細胞増殖因子(FGF)とそ
の受容体(FGFR3)の発現上昇が関連していることが報告されている。 方法:大
腸がん細胞株 Caco2 に FGFR3 に対する siRNA を処置することにより、FGFR3 の発
現をノックダウンした siFGFR3 群、siRNA 処置後にレンチウイルスにより FGFR3 を
過剰発現させた FGFR3 発現群を用いてInvasion Assay により浸潤能および MTT Ass
ay により 5-FUに対する耐性獲得について検討した。 結果:Invasion Assay
において、Control siRNA を処置した siC 群と比べて、siFGFR3 処置群の浸潤能は
低下しており、FGFR3 発現群において浸潤能の低下が回復したことから、FGFR3 の発
現は、Caco2 の浸潤能が亢進した 。MTT Assay において、siC 処置群の 5-FU に対
する IC50 値が 864.1μM であり、siFGFR3 処置群の IC50 値が 27.7μM だったこ
とから、FGFR3 発現をノックダウンすることにより、5-FU に対する抗がん作用が約
30 倍高くなった。さらに、FGFR3 発現群は、1000μM 以上だったことから、FGFR3
の発現は、Caco2 において 5Fu の抗がん剤耐性の獲得に働くことが示された。また
、FGFR3 の下流シグナルについて検討した結果、RAS/MAPK 経路、PLC-γ経路、PI3K-
Akt 経路のそれぞれで、FGFR3 発現による活性化がみられた。 結論:大腸がん
細胞において FGFR3 の発現は、浸潤能を亢進および抗がん剤耐性獲得により、がん
悪性化につながることが示された。また、これらの作用は FGFR3 発現による下流シ
グナルの活性化の関与が示唆されたことから、FGFR3 は大腸がんにおける標的分子と
して役立つと考えられる。