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ヨコヤマ シセイ
YOKOYAMA SHISEI
横山 史生 所属 京都産業大学 国際関係学部 国際関係学科 職種 教授 |
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| 発表年月日 | 2025/03/07 |
| 発表テーマ | 米国財務省証券流通市場の構造変化と規制の新動向 |
| 会議名 | 証券経済学会 関西・中部合同部会 |
| 学会区分 | 地方学会 |
| 発表形式 | 口頭(一般) |
| 単独共同区分 | 単独 |
| 開催地名 | 福井県大学連携センターFス福井県 |
| 開催期間 | 2025/03/07 |
| 概要 | 本報告は、米国財務省証券流通市場が近年抱える不安定化要因と、その背景にある市場構造の変化、さらに規制改革の新動向を考察している。まず、市場規模の拡大とともに、電子取引が急速に普及し、アルゴリズム・プログラムを利用した高頻度取引(High Frequency Trading:HFT)を行う自己勘定取引業者(Proprietary Trading Firm:PTF)の参入が進んだ結果、取引の流動性や透明性が一見高まった反面、市場が短時間で急変動するリスクも増したと指摘される。特に、2014年10月の「フラッシュ・クラッシュ」では、米国10年債利回りがわずかな時間帯に急低下と急上昇を繰り返し、大幅な日中変動幅を記録した。この事例は、電子的な取引メカニズムとHFT業者の行動が市場安定性に与える影響を象徴する出来事として位置づけられている。
こうした状況を踏まえ、米国の財政当局(連邦財務省)および証券市場規制当局(証券取引委員会:SEC)は、市場監視の強化と新たな規制措置を打ち出した。具体的には、従来から証券諸法上の「ディーラー」登録を求められていなかったPTFの登録義務化、レギュレーションATS(Alternative Trading System:代替的取引システム)改正案による取引プラットフォーム管理の厳格化、さらにはTRACE(金融証券業規制機構:FINRAが運営する会員証券会社・金融機関等が行う債券売買結果果情報データ報告・収集・監視のための仕組み)データを通じた取引情報の収集・公表制度の改善が進められている。特に、TRACEによって取引高などのデータを公表することは、市場参加者間での情報格差を縮小し、流動性の変化要因をより正確に把握するための有効手段とされる。こうした制度改革により、市場の安定性と透明性を高めつつ、革新的な電子取引の発展とのバランスを図ることが今後の課題となっている。 |