ナンバ リュウヤ   RYUYA NAMBA
  難波 隆弥
   所属   京都産業大学  理学部 数理科学科
   職種   准教授
研究期間 2019/08~2021/03
研究課題 被覆グラフ上のランダムウォークの極限定理に関する多角的研究
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 研究活動スタート支援
研究機関 立命館大学
科研費研究課題番号 19K23410
代表分担区分 研究代表者
研究者・共同研究者 難波 隆弥
概要 被覆グラフは正方格子や三角格子、六角格子などの古典的な周期グラフの基本的な一般化とみなせる離散モデルであり、被覆変換群の構造がその上のランダムウォークの長時間挙動に大きく影響を与えることはよく知られている。本年度は被覆グラフ上のランダムウォークに関して「ランダムウォークの非対称性」、「被覆変換群の非可換性」、「極限過程の不連続性」をキーワードとして考察し、以下の成果を得た。 1) ベキ零群を被覆変換群とする被覆グラフ(ベキ零被覆グラフ)上の中心極限定理は既に自身が石渡聡氏(山形大学)、河備浩司氏(慶應義塾大学)との共同研究でランダムウォークが非対称の場合に証明を行った。本年度はこの主張のさらなる精密化としてベキ零被覆グラフ上の非対称離散推移半群のエッジワース展開が得られることを離散幾何解析的手法を援用して示した。これにより収束スピードのオーダーが明らかになっただけでなく、数理ファイナンスにおける基本的なモデルの1つであるHestonモデルの格子近似の構築などへの応用の道も開かれると考えられる。 2) 不連続な確率過程を広く極限として捉えるような被覆グラフ上の極限定理の構築へ向けて、青山崇洋氏(岡山大学)と共同研究を行った。その第一段階として、具体的に書き下せる結晶格子上の点過程のクラスをより拡充することを目指し、青山-中村の導入した多次元多重オイラー積を結晶格子上で定義した。そしてある条件下でそのオイラー積の正規化により得られる複素関数がある複合ポアソン分布の特性関数になるための必要十分条件を得ることに成功した。さらにいくつかの具体例を通じて、結晶格子の幾何学的諸量と多次元多重オイラー積の間に明示的な関係があることを見出した。 上記2つに関しては、一定の成果が得られたため現在論文の形に整理しており、近日中に投稿する予定である。