セオ ミスズ   SEO MISUZU
  瀬尾 美鈴
   所属   京都産業大学  生命科学部 先端生命科学科
   職種   教授
研究期間 1994/04~1996/03
研究課題 胚性癌腫細胞の分化誘導におけるFGFとFGFレセプター亜種の発現と機能の解析
実施形態 科学研究費補助金
研究種目名 一般研究(C)
研究機関 京都産業大学
キーワード P19細胞、胚性がん腫細胞、分化誘導、FGF9、FGFR、レチノイン酸
代表分担区分 研究代表者
代表者 瀬尾美鈴
概要 神経細胞の分化誘導過程における線維芽細胞増殖因子(FGF)とFGFレセプター(FGFR)亜種の果たす役割について明らかにするため、これらの遺伝子発現および蛋白質の発現について解析した。多分化能を持つ胚性癌細胞Embryonal carcinoma(EC)P19細胞の細胞塊を形成し、レチノイン酸RAで処理し、神経系細胞に分化を誘導した。FGFは9種の異なる遺伝子に由来するFGFファミリーメンバーが、FGFRについては4種のFGFRファミリーメンバーが見いだされている。未分化P19細胞および分化を誘導したP19細胞からRNAを抽出し、RT-PCRによってこれらの遺伝子発現を解析した。未分化P19細胞ではFGF4、FGF5、FGF6、FGF8およびFGFR1、FGFR2、FGFR3の遺伝子が発現していた。10^<-6>MのRAで神経細胞への分化を誘導すると、FGF2、6、9の発現が上昇し、FGF4は分化誘導開始時に一過性に上昇しその後は減少した。FGF5、8の発現は減少した。神経細胞の分化誘導におけるFGF2とFGF9の発現上昇は二相性であり、細胞塊形成時すなわち神経細胞への分化方向が決定する時期と、形態的に分化した神経細胞やグリア細胞が発現する時期に見られた。FGF6は細胞塊形成時ではなく、組織培養皿において発現が上昇した。FGFRについては、FGFR1の遺伝子は常に発現しており、FGFR2とFGFR3の発現が神経細胞への分化誘導過程で上昇した。FGFR4は細胞塊形成時に一過性の発現が認められたが、その発現は非常に弱かった。神経細胞への分化誘導過程で発現するマウスFGF9のcDNAをクローニングし塩基配列を決定し、日本DNAデータバンクDDBJに登録した(D38258)。次に蛍光抗体法を用いて、FGF9の蛋白質の発現を解析した。FGF9に対する抗体で神経細胞が強く染色されたが、次第にグリア細胞も染色された。本研究より、FGF9は分化方向決定時の神経幹細胞と分化した神経細胞やグリア細胞に作用しそれらの機能の維持に関与している可能性が示唆された。