ツゲ ヒデアキ   TSUGE HIDEAKI
  津下 英明
   所属   京都産業大学  生命科学部 先端生命科学科
   職種   教授
研究期間 2000~2000
研究課題 リソゾーム由来の新カスパーゼ3活性化酵素と肝癌におけるこの欠如
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 特定領域研究(C)
研究機関 徳島文理大学
科研費研究課題番号 12215151
研究者・共同研究者 勝沼 信彦,津下 英明
概要 要約:癌細胞はアポプトーシスから免れている細胞であるということは、癌が癌である為の最も大切な共通の性質であり、今まで全くわかっていなかった。平常細胞のリソゾームには2種のプロカスパーゼ3を活性化する酵素があることを発見している。更に、高分子50kDaの方だけが特定の引き金により細胞質に遊離してプロカスパーゼ3を活性化することにより、アポプトーシスに関与することがわかっている。我々の調べた5種類の肝癌培養細胞では両者ともに非常に低値であった。その他の7種の癌では18kDaのものは非常に高値であったが、50kDaのものは全てに欠如していた。即ち12種の全ての癌に50kDaのリソアポプターゼが欠如しており、これが癌細胞にアポプトーシスが起こらない原因と考えられる。 研究目的:癌の最も特徴的な性格の1つは、アポプトーシスから免れていることである。我々はその理由の1つとして、50kDaリソアポプターゼを欠如していることを明らかにした。50kDaのリソアポプターゼの遺伝子発現を明らかにして、発現させることが出来れば癌細胞にアポプトーシスを誘導することが可能になる。新しい癌治療法の開拓となる。 研究組織:リソアポプターゼの構造決定と性質:勝沼信彦(徳島文理大学・健康科学研究所・教授)、各種癌のリソアポプターゼの分析:津下英明(徳島文理大学・健康科学研究所・助教授) 方法と結果:肝癌培養細胞McARH7777、HepG2、H4IIE、MH1-C(第1群)、ならびにIA-XsSBR、他のオリジンのHL-60、NBT-II、NMN(第2群)の培養細胞を大量に培養し、リソゾーム分画をとり、ジギトニン抽出液を酵素として測定に使用した。乳腺癌種MC-5、MX-1、MC-2およびH-31のNudemiceに移植した固形癌(第3群)を使用した。第1群はプロカスパーゼ3の活性化作用をほとんど示さなかった。第2群はin vitroでプロカスパーゼ3の強い活性化作用を持つが、これは全てl8kDaの活性であり、50kDaのものは欠損していた。第3群も高い18kDa活性を持っていたが、50kDaのものは持たなかった。即ち、18kDaの含有量は癌細胞種により大差があるが、全て50kDaのものを欠損していた。これが、これらの癌細胞がアポプトーシスを起こさない理由と考えている。 考察:(1)これら12種の癌細胞に全て50kDaの欠損が見られたが、遺伝子の欠損なのか、遺伝子は存在するが発現の問題なのか?が今後の最大の課題である。(2)それには50kDa酵素のクローニングが最大の課題である。(3)18kDaのものを細胞質に遊離させて、細胞質のプロカスパーゼ3の活性化に参画させることが出来ないであろうか?