イソタニ ユウスケ
礒谷 有亮 所属 京都産業大学 文化学部 国際文化学科 職種 助教 |
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研究期間 | 2010~2011 |
研究課題 | 両大戦間期のフランスにおける美術展の地政学的研究 |
実施形態 | 科学研究費補助金 |
研究委託元等の名称 | 日本学術振興会 |
研究種目名 | 特別研究員奨励費 |
研究機関 | 大阪大学 |
科研費研究課題番号 | 10J03136 |
研究者・共同研究者 | 礒谷 有亮 |
概要 | 本年度はフランス、アメリカでの現地一次資料調査を中心に行った。とりわけ、パリ・ルーヴル美術館内国立美術館アーカイヴ、アメリカ-ニューヨーク近代美術館アーカイヴでの調査が主たる成果となった。両アーカイヴでは、「独立派芸術の巨匠」展(1937年)、「国際独立派芸術の起源と発展」展(1937年)、「アメリカ美術の三世紀」展(1938年)、「キュビスムと抽象美術」展(1936年)について、昨年度から継続して調査していた一次資料の収集が完了した。それにより、フランスにおいて、一次大戦以前のモダンアートが国家主義的かつ制度的に利用されていた一方で、よりラディカルな戦後の前衛美術は当時の美術制度には組み込まれえなかったものの、一定の評価を与えられていたことが裏付けられた。また、アメリカに関連する後者二展の分析からは、フランスと同様、アメリカにおいても、国家主義と前衛主義が混在し、それらが相互に関連しながら美術を利用した外交が戦略的に展開されていたことが明確になった。 上記の成果に加えて、国際独立派展、アメリカ美術展の会場となった、ジュ・ド・ポーム関連の資料を多数入手することができ、これら両展を、当時パリで唯一公式の外国美術の受け皿であった同館の制度的な枠組の中で考察することが可能になった。また、上記の展覧会関連資料調査の過程で、多数の作品写真が基礎資料に含まれていることが明らかになった。パリ、ニューヨークの職業写真家たちによって撮影されたこれらの写真は、大規模な作品移動を伴う国際的な展覧会の準備段階で不可欠な要素だった。両大戦間期は複製写真図版の利用が本格化した時代として知られている。本年度の調査で得られたこの結果は、美術館、美術展といった制度の確立とともに、新たなメディアの発達が、相互補完的に国際的な美術状況を形成していたことを示している。 |